犬を飼う前に知っておくべき法律や条例に関する基礎知識
犬を飼うにあたって、事前に知っておかなければならない法律があります。もし、法律違反となると罰金や罰則が処されることがあり、後で知らなかったということにならないようしっかりおさえておきましょう。ここでは、ブリーダーから犬を迎える際や、犬の飼育時に関係する法律について解説していきます。
現物確認・対面説明の義務化
2013年9月に施行された改正動物愛護管理法により、第一種動物取扱業者は対象の動物を購入する者に対して、現物確認と対面説明を行わなければなりません。第一種動物取扱業者とは営利を目的として、哺乳類、鳥類、爬虫類の販売を行っている者を指します。ちなみに第二種動物取扱業者もありますが、こちらは営利を目的としない、哺乳類、鳥類、爬虫類の販売を行っている者を指します。
現物確認と対面説明の概要は以下の通りです。
- 現物確認:販売する動物の現在の状態を見せること
- 対面説明:飼育方法、生年月日、適正飼養について対面で説明する
この法律はブリーダーやペットショップ、通販など、該当する動物を販売している者全てが対象です。そのため、通販で対象のペットを購入しようとする場合でも、飼い主になる人は一度販売元へ直接出向く必要があります。
畜犬登録を行う
最初に犬を飼うためには、犬を飼育していることを登録する「畜犬登録」という手続きが必要です。畜犬登録とは、狂犬病予防法で決められている手続きで、飼い始めた日もしくは生後91日を経過した日から、30日以内に登録の届出を行う必要があります。畜犬登録は一度手続きを済ませてしまえば更新の必要がありません。ただし、人に譲渡したり引っ越したりした場合は、再度登録が必要になります。
登録を完了すると鑑札が発行され、証明書として首輪に付けなければなりません。畜犬登録の義務を怠ると、20万円以下の罰金が処せられます。
狂犬病予防注射の接種
わんちゃんを飼うためには、狂犬病予防注射を毎年4月1日から6月30日の間に、接種を受けさせなければなりません。狂犬病は発症すると、犬も人も100%助からない恐ろしい感染症です。そのため、必ず接種を受けさせる必要があり、義務を怠ると畜犬登録と同様、20万円以下の罰金が処せられます。
狂犬病予防注射の接種では、事前に日時と会場についての通知書が送付されるため、当日に指定場所で接種を受ける流れとなります。もし、日時の都合が合わない場合は、動物病院で接種を受けることも可能です。
動物愛護および管理に関する法律
犬が幸せに暮らすための法律として、「動物の愛護及び管理に関する法律」も定められています。わんちゃんの幸せのためにも、しっかり理解し意識するようにしましょう。
- 犬の習性等に応じて適正に飼養し、健康と安全を守るように努めること
- 飼い犬が人の生命・身体・財産などに害を加えたり、迷惑をおよぼすことのないよう努めること
また、以下の規定に関しては犬以外の愛護動物にも該当し、違反した場合は罰金もしくは懲役になることがあります。
(2019年改正)動物愛護法の第44条
概要 | 罰則 |
愛護動物をみだりに殺したり傷つけること | 違反した場合は、5年以下の懲役または500万円以下の罰金(第44条第1項) |
愛護動物に対し、みだりに給餌又は給水をやめることにより衰弱させる等の虐待を行うこと | 違反した場合は、100万円以下の罰金または1年以下の懲役(第44条第2項) |
愛護動物を遺棄すること | 違反した場合は、100万円以下の罰金または1年以下の懲役(第44条第3項) |
都道府県の条例の要点
犬を飼う際のルールは、各都道府県でも条例が制定されています。例えば、東京都においては以下のような条例が定められています。
- 外出時は必ずリードを付けること
- 飼い主を適正にコントロールして人に危害を加えないようにすること
- 排泄物の処理をすること
外出時は必ず犬にリードを付けること
犬を散歩に連れて行く際は必ずリードを付けなければなりません。たとえ、しつけをしっかり行っているとしても、リードを付けずに犬を外に連れ出すのは条例違反となります。違反した場合は、1日以上30日未満の身柄の拘束もしくは、1,000円以上1万円未満の罰金がかかります。
飼い犬を適正にコントロールして人に危害を加えないようにすること
万が一犬が人に噛みついた場合は、以下の対応を早急に行わなければなりません。
- 24時間以内に動物愛護管理センターもしくは保健所に届出
- 48時間以内に狂犬病の疑いがあるかどうか、動物病院へ検診を受ける
もし、保健所に届出を行わなかった場合は拘留または科料、獣医師の検診を行わなかった場合では5万円以下の罰金となります。
排泄物の処理をすること
散歩中にわんちゃんがうんちをした場合、飼い主が処理せずに放置すると条例違反となります。たかが、うんちの後始末をしなかっただけと思うかもしれませんが、軽犯罪法違反に該当する可能性があり、拘留もしくは科料に処せられることがあるので注意してください。
2022年6月1日からマイクロチップの装着が義務化
2022年6月1日改正動物愛護法の施行により、ブリーダーやペットショップなどで販売される犬と猫は、マイクロチップの装着が義務化されました。したがって、今後販売される犬と猫には必ずマイクロチップが装着されることになります。ただし、すでに飼育している犬と猫においては装着の義務はなく、あくまでも努力義務とされています。
マイクロチップの装着のメリットとしては以下の3つが挙げられます。
- 迷子のときに飼い主が見つかりやすくなる
- 体内に埋め込んでいるためなくならない
- ペット保険の保険料が割引される場合がある
マイクロチップには識別番号があり、専用のリーダーで読み取ることで、その飼い主の情報が分かります。そのため迷子になった場合でも、すぐに飼い主のもとへ返せるメリットがあります。
マイクロチップは体内に埋め込んでいるため、なくなる心配がありません。また、マイクロチップの耐久年数は30年ほどのため、一度埋め込んでしまえば一生情報を読み取ることが可能です。
マイクロチップを装着している犬猫は「マイクロチップ割引」制度として、ペット保険の保険料が安くなるケースがあります。