パピートレーニングって?やってはいけないことは?時期や内容を徹底解説
犬は人間と違い、生まれてわずか1年ほどで、身体や精神面がほぼ大人の状態へと成長します。人間社会や犬社会に慣れ、充実した生活を送るためには、適切な時期からトレーニングを行うことが大切です。
そこで本記事では、子犬が成長する上で欠かせないパピートレーニングについて解説していきます。
- パピートレーニングとは
- パピートレーニングを行わないと何が起こる?
- パピートレーニングの種類や方法
パピートレーニングで飼い主側がやってはいけないことも合わせて解説していきます。ぜひ最後までお読みください。
パピートレーニングとは
パピートレーニングとは、子犬を家に迎え入れたときから行うしつけのことを指します。
親元から離れてすぐの子犬は、人間社会や犬社会で生きていくための分別や、行動の良し悪しがわかりません。そのため、子犬にさまざまな経験を積ませ、順応させていく必要があります。
子犬のころの経験が、その犬の生涯にわたる性格形成に大きな影響を及ぼすため、子犬時期からパピートレーニングを行うことが大切なのです。
パピートレーニングをしないとどうなる?
子犬時代に適切なパピートレーニングを行わなかった場合、以下のような問題に直面するおそれがあります。
- 過剰に怖がったり攻撃的になったりする
- 我慢を知らない子になる
具体的にはどのような状態になるのか、それぞれみていきましょう。
過剰な怖がり、または攻撃的な子になる
人やほかの犬との関わり方を知らない犬は、適切な距離感や力加減が分からず過剰に怖がったり、人や犬に対して攻撃的になったりすることがあります。
本来、適切な距離感や噛む力加減などのしつけは、子犬のころから徐々に身に付けさせていくものです。しかし、成犬になってからしつけをしようとしても、人やほかの犬と関わることに苦手意識を感じ、なかなか馴染めずに苦労するでしょう。
我慢を知らない子になる
犬は、なにをしても許される環境下にいると、自分本位な考え方が定着して我慢できない性格になります。そのため、思いどおりにならないと「吠える」や「噛む」などの問題行動に発展する場合も少なくありません。
人と暮らしていく上で、我慢が必要な場面は多くあるため、自我をコントロールする能力はとても重要です。
パピートレーニングを始める時期
パピートレーニングは、迎え入れてからできるだけ早めにスタートしましょう。トレーニング内容によっては、家に迎え入れたその日からスタートできるものもあります。
ただし、犬は迎え入れて間もない状態は飼い主を認識していません。そのため「叱る」という行為は効果がないばかりか、人に不信感を抱く原因になります。
まずは、生活環境に慣れさせていき、飼い主との信頼関係を構築しながら少しずつトレーニングに取り組みましょう。
パピートレーニングの種類
パピートレーニングの種類は、主に以下のようなものがあります。
- トイレトレーニング
- 甘噛み防止トレーニング
- ハンドリングトレーニング
- アイコンタクトトレーニング
- お散歩トレーニング
- 呼び戻しトレーニング
ほかにもさまざまなトレーニングがありますが、今回は犬が成長していく上で基本となるトレーニングのご紹介です。それぞれのトレーニングの特徴や、実際のトレーニング方法を解説していきますので参考にしてください。
トイレトレーニング
トイレトレーニングは、犬の行動をある程度制限できるサークルを使うといいでしょう。完全なフリースペースでのトレーニングよりも効果が出やすい傾向にあるためです。
犬は排泄をする前、そわそわと動き回る、床の匂いをしきりに嗅ぐといった行動をします。そのようなしぐさがみられたらできるだけタイミングを逃さず、サークル内のトイレまで抱っこして連れて行きましょう。
犬の排泄の多いタイミングは、主に以下のとおりです。
- 寝起き
- 食後
- 運動後
愛犬がトイレに失敗しなくなってきたら、次は自分からトイレに行けるよう、根気強く教えます。方法として、排泄前の行動がみられたら、サークル前まで連れていきトイレへ誘導します。愛犬がトイレに成功したら、トイレまでの距離を徐々に伸ばしていきましょう。
子犬の時期は排泄回数が多く、失敗はつきものです。トイレの失敗を叱ると隠れて排泄するようになってしまうためやめましょう。
甘噛み防止トレーニング
子犬だからといって人の手を噛む行為を許していると、噛むことに躊躇がなくなり平気で本気噛みをする子になりかねません。そのため、甘噛み防止のトレーニングも迎え入れた直後から少しずつ進めていきましょう。
【甘嚙み防止トレーニングの手順】
- 犬が甘噛みをしてきたら、決めた言葉を一度だけはっきりと伝え、無表情でその場から離れる
- 犬が噛んできたときに発する言葉を統一(「ダメ」や「痛い」など)
- 手を出しても噛まなくなるまで繰り返す
言葉を何度も繰り返したり、オーバーな身振りで逃げ回ったりすると、犬は遊んでもらっていると勘違いして余計にエスカレートする可能性があります。
甘噛みを防止するには、上記のトレーニングを何度も繰り返し行い、人の手を噛んではいけないということを理解させるのが大切です。
ハンドリングトレーニング
ハンドリングとは「犬に触れる」ことを指します。犬は、指先や鼻先、耳など身体の末端部分を触られるのを嫌がります。ですが、子犬時代からハンドリングトレーニングを行うことで、病院の診察やお手入れなどの際に役立ちます。
【ハンドリングトレーニングの手順】
- 座った状態の犬を後ろから抱っこする
- 前脚を持ち膝の上に抱っこして、お腹を見せる体勢にさせる
- 手や足、口まわりなどをまんべんなく触る
- ひととおり終わったら褒めて解放する
- 慣れるまで毎日繰り返す
ポイントは、多少嫌がられてもトレーニングを止めないことです。噛んだり鳴いたりすれば嫌なことが終わると理解してしまうと、トレーニングが難しくなります。嫌がった場合は無言で優しく抱きしめ、落ち着くのを待ちましょう。
成犬に近づくと抵抗する力も強くなるため、子犬のときから毎日トレーニングすることが大切です。
コミュニケーショントレーニング
コミュニケーショントレーニングとは、文字どおり犬と人がお互いの気持ちを伝え合うことを指します。なかでも「遊び」は、犬とコミュニケーションをとる方法として効果的です。
犬によって、好きなおもちゃや遊びは異なるため、迎え入れた子犬がどれに興味を示すのかしっかり観察しましょう。
- 好きなおもちゃは?(ロープ・コング・ぬいぐるみ)
- 好きな遊び方は?(投げる・引っ張る・動かす)
犬が人と遊ぶのは楽しいことだと認識すれば、別のトレーニングにも応用できます。
反対に、コミュニケーション不足により人に興味を持たない犬は、どんなトレーニングもなかなかうまくいきません。
まずは「遊び」を通してコミュニケーションを学び、人と関わることに対して意欲的な犬へと育てることが大切です。
アイコンタクトトレーニング
アイコンタクトは、信頼関係があってこそのしぐさです。
一般的に、犬はストレスを感じている場合「目線のそらし」という合図で表現します。
初対面で犬に目を合わせようとすると、顔をそむける子が多いのはそのためです。
アイコンタクトトレーニングは家に迎え入れた直後はまだうまくいきません。数週間経ち、お互いの存在に慣れてきてからトレーニングを始めましょう。
【アイコンタクトトレーニングの手順】
- 犬が落ち着いている状態で名前を呼ぶ
- こちらを向いたらしっかりと褒める
- 犬との距離を伸ばしながら繰り返す
- 遊んでいるとき、興奮しているときに呼び、振り向いたら褒める
- 屋外など、刺激が多い場所でも繰り返し練習する
目が合うといいことが起こるという認識を持たせることで、トレーニングもスムーズに進むでしょう。
お散歩トレーニング
お散歩トレーニングは、室内でリードをつけての練習や、抱っこで屋外の環境(車や電車の音・公園の環境音など)を経験させたのちに行いましょう。
外でスムーズに歩けるようになったら、続いては人の横について歩く練習です。常に犬が飼い主の前を歩き、飼い主が犬に引っ張られるようなお散歩は望ましくありません。
【お散歩トレーニングの手順】
- リードを緩めた状態で持ち、犬は人の左側を歩かせる
- 犬が飼い主の前へ出そうになったら、歩きながら犬の行く手をふさいで別方向に歩く(まっすぐ歩く必要はない)
- 横について歩けたら褒める
習慣化するまで何度も繰り返す必要がありますが、自由に歩き回る時間をとってあげることで、メリハリのあるトレーニングができます。また犬の集中力は短いため、10分ほどで切り上げましょう。
呼び戻しトレーニング
ドッグランや公園はもちろん、災害時などにも役立つのが呼び戻しトレーニングです。例えば「名前を呼ぶ=いいこと」があると認識させることで、犬を呼び戻すことが可能になります。
犬にとって屋外は、音や匂いをはじめほかの犬の存在など、さまざまな刺激であふれています。そのような状況下で、呼び戻しに応じられるようになるためには、根気強く教えていくほかありません。
【呼び戻しトレーニングの手順】
- 犬のすぐ近くで名前を呼び、反応がない場合はリードを軽く引く
- 犬が飼い主もとに来たら褒める
- 犬との距離を少しずつ広げていく
- 呼び声だけで来るようになるまで繰り返す
呼び戻しトレーニングは、家の中や公園などさまざまな場所で練習してください。ただ、ドッグランのような広くてほかの犬がたくさんいるような場所は、犬が興奮しやすくなるため難易度は高くなります。そのため、最初は手の届く範囲から始め、徐々に範囲を広げていきましょう。
パピートレーニングでやってはいけないこと
子犬のころは物事に対して敏感なため、一度感じた恐怖や不安感を生涯引きずってしまうことも少なくありません。よかれと思って行ったトレーニング方法が、犬にとって逆効果だったなんてことは避けたいものです。
そこでここからは、パピートレーニングでやってはいけないことを解説していきます。
- 大きな音で脅す
- 顔を無理やり向けさせる
- 叱る際に名前を呼ぶ
- 甘やかしすぎない
それぞれの対応が犬に与える影響を含め、詳しく解説していきます。
大きな音で脅す
言うことを聞かないからと何度も机や壁を叩くような行為は、犬にとってトラウマになります。たとえ、自分に向けられたものではない音でも、敏感に反応しパニックに陥ることもあるのです。
大きな音への恐怖心から犬の行動が抑制され、一見言うことを聞くようにみえますが、パピートレーニングを身に付ける上で根本的な解決にはなりません。
顔を無理やり向けさせる
犬は、叱られているときや不安なときなどにそっぽを向くことがあります。どうにかこの場を切り抜けたいという一心で行うその習性を無視し、無理やり顔を自分のほうへ向けるという行為は、犬にとって苦痛以外の何物でもありません。
力ずくで従わせても、犬との関係はこじれるばかりです。心の溝が深まるような行動は控え、犬のほうから振り向いてくれるようなトレーニング方法に変える必要があるでしょう。
叱る際に名前を呼ぶ
犬を叱ったり、その犬が得意ではないことをしたりする際に名前を呼ぶと「名前を呼ぶ=ネ嫌なこと」と思うようになってしまいます。そのため、呼び戻しに応じない、呼ばれたときにおびえるなどの行動を取るようになります。
叱る必要があるときは、名前ではなく「だめ」や「NO」などのコマンドを活用し、名前との結びつきを作らないようにしましょう。
甘やかしすぎない
子犬は何をしてもかわいらしく、つい甘やかしてしまいがちです。ただその対応を続けていると、犬自身が物事の良し悪しを理解できません。そして悪気なく問題行動を引き起こすおそれがあります。
このような事態を防ぐためには、家族内でしてもいいこととダメなことの線引きをしっかりと話し合い、全員が一貫した態度をとることが大切です。曖昧な態度ではなく、メリハリをつけた態度で接していけば、犬も迷いなくトレーニングに取り組めるでしょう。
まとめ
ここまで、パピートレーニングについて解説してきました。
- 犬との信頼関係の構築は、パピートレーニングにおいて重要
- パピートレーニングは、迎え入れてからできるだけ早めにスタート
- パピートレーニングを行わなかった犬は、怖がりで攻撃的・我慢ができない犬になりがち
- トレーニングの理解度は個体差があるため、どのトレーニングも気長に根気強く続ける
子犬時代からさまざまなトレーニングを経験を積んだ犬は、穏やかで親しみやすい犬へと成長します。子犬にとって重要な社会化期に行うパピートレーニングは、飼い主が犬に送る最初のプレゼントでもあるのです。
これらの情報が、愛犬と充実したドッグライフを送るための参考になれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。