日本犬とは?天然記念物の全6種の特徴、歴史や飼い方も解説!
公開日:2025年10月22日
更新日:2025年10月22日

日本犬とは、日本で古くから人と暮らし、風土に根づいた在来犬種の総称です。その中でも柴犬、紀州犬、四国犬、甲斐犬、北海道犬、秋田犬の6犬種は、国の天然記念物に指定されており、世界的にも高い人気を誇ります。
古代から狩猟犬や番犬として活躍し、忠誠心と独立心をあわせ持つ日本犬は、凛とした美しさと素朴な魅力で多くの人を惹きつけてきました。この記事では、天然記念物である6種の日本犬の種類や特徴、その歴史的背景から、現代における飼い方やしつけのポイントまで、網羅的に解説します。
[目次]
日本犬はどんな犬?公認犬種から絶滅犬種まで
まずは、日本犬の定義、そして外見や性格の特徴をご紹介します。また、天然記念物指定犬から、希少種や現在では絶滅してしまった犬種まで詳しくご紹介します。
日本犬の定義│性格や身体的な特徴
日本犬とは、その祖先が古くから日本列島に住み着いていた「地犬(じいぬ)」をルーツとする犬種です。洋犬との交配が進む中で、純粋な種を保存する目的で活動が始まり、その結果として現在の6犬種が公認されました。
日本犬保存会によって定められた基準では、「立ち耳」や「巻き尾」、「素朴な骨格構成」などが共通の特徴として挙げられます。また、寒さから身を守るための硬いトップコートと、柔らかいアンダーコートの二重構造になった、ダブルコートの被毛も特徴的です。
日本犬の性格面としては、飼いおもに非常に忠実で従順な一方で、縄張り意識や警戒心が強いという共通点があります。そして、自立心が高く、頑固な一面があるため、信頼関係の構築が飼い方のポイントとなります。
【天然記念物指定犬】日本犬6種類の一覧
日本犬のうち、1931年から1937年にかけて国の天然記念物に指定されたのは、秋田犬、甲斐犬、紀州犬、柴犬、四国犬、北海道犬の6犬種です。
それぞれの犬種は、その土地の地形や獲物に応じた狩猟犬として活躍してきた歴史を持ち、地域名を冠しています。以下に、基本情報をかんたんな一覧表にまとめ、後の章では各犬種の特徴を詳しく掘り下げます。
犬種 | 原産地 | サイズ | 主な特徴 |
柴犬 | 日本本州 | 小型犬 | 忠実で警戒心が強い |
紀州犬 | 和歌山県 | 中型犬 | 猟欲が強く勇敢 |
四国犬 | 四国地方 | 中型犬 | 独立心旺盛で俊敏 |
甲斐犬 | 山梨県 | 中型犬 | 忠誠心が高く家庭犬にも人気 |
北海道犬 | 北海道 | 中型犬 | 頑健で寒さに強い |
秋田犬 | 秋田県 | 大型犬 | 温厚で堂々とした性格 |
【そのほかの日本犬】希少種・絶滅種・地域在来犬一覧
国の天然記念物に指定された6犬種以外にも、日本には地域固有の犬が存在します。沖縄県の琉球犬や長野県の川上犬は、それぞれの地域で天然記念物に指定され、保存活動が続けられている希少な地犬です。
■ 現存する希少種・地域在来犬(県天然記念物含む)
犬種名 | 原産地域 | サイズ |
川上犬 | 長野県(信州柴系) | 中型犬 |
琉球犬 | 沖縄県 | 中型犬 |
岩手犬 | 岩手県 | 中型犬 |
十石犬 | 群馬県・長野県 | 中型犬 |
梓山犬 | 長野県 | 中型犬 |
美濃柴犬 | 岐阜県 | 中型犬 |
三河犬 | 愛知県 | 中型犬 |
山陰柴犬 | 鳥取県・島根県 | 中型犬 |
海部犬 | 徳島県 | 中型犬 |
羽根犬 | 高知県 | 中型犬 |
肥後オオカミ犬 | 熊本県 | 中型犬 |
日向奥古新田犬 | 宮崎県 | 中型犬 |
屋久島犬 | 鹿児島県 | 中型犬 |
大東犬 | 沖縄県(南大東島) | 中型犬 |
一方で、山形県の高安犬や熊本県の肥後オオカミ犬のように、すでに絶滅してしまった犬種も少なくありません。これらの犬は、かつてその土地の猟犬として活躍していましたが、時代の変化とともに姿を消しました。
■ 絶滅した日本犬種一覧
犬種名 | 原産地域 | サイズ |
津軽犬 | 青森県 | 中型犬 |
高安犬 | 山形県 | 中型犬 |
会津犬 | 福島県 | 中型犬 |
赤城犬 | 群馬県 | 中型犬 |
黒坂石犬 | 群馬県 | 中型犬 |
天城犬 | 静岡県 | 中型犬 |
石州犬 | 島根県・山口県 | 中型犬 |
阿波犬 | 徳島県 | 中型犬 |
小郡犬 | 福岡県 | 中型犬 |
椎葉犬 | 宮崎県 | 中型犬 |
甑山犬 | 鹿児島県 | 中型犬 |
薩摩犬 | 鹿児島県 | 中型犬 |
根利犬 | 群馬県 | 中型犬 |
山陽犬 | 岡山県・広島県・山口県 | 中型犬 |
因幡犬 | 鳥取県 | 中型犬 |
秩父犬/秩父オオカミ犬 | 埼玉県 | 中型犬 |
仙台犬/越路犬 | 宮城県 | 中型犬 |
戸隠犬/保科犬 | 長野県 | 中型犬 |
綾地犬/山仮屋犬 | 大分県・宮崎県 | 中型犬 |
越後柴犬 | 新潟県 | 中型犬 |
加州犬 | 石川県 | 中型犬 |
熊野犬/熊野オオカミ犬 | 三重県・和歌山県・奈良県 | 中型犬 |
壱岐犬 | 長崎県 | 中型犬 |
日向犬 | 宮崎県 | 中型犬 |
奄美犬 | 鹿児島県 | 中型犬 |
地域の文化と共に生きてきた在来犬の存在は、日本の犬の歴史の多様性を示しています。
日本犬6種類│特徴や性格、体高・体重や平均寿命は?
国の天然記念物に指定されている日本犬6種類は、それぞれに異なる個性と魅力を持っています。ここでは、これら6犬種の具体的な特徴や性格、体の大きさや平均寿命について詳しくみていきます。
柴犬│日本で最も愛される国民的犬種
項目 | 内容 |
原産地域 | 日本全国(特に本州) |
平均体重/体高 | 約8〜12kg/約36〜41cm |
平均寿命 | 約12〜15年 |
平均価格 | 約20〜40万円 |
性格の特徴 | 家族に忠実で愛情深い。警戒心が強く自立心がある。 |
外見の特徴 | 小柄で筋肉質。立ち耳・巻き尾が特徴。 |
飼いやすさ | ★★★★☆(初心者にもおすすめ) |
なりやすい病気 | アレルギー性皮膚炎、膝蓋骨脱臼、歯周病 |
柴犬は、その飼いやすさと愛らしい見た目から、国内外で絶大な人気を誇ります。毛色は、赤、白、黒などバリエーションがあります。
犬の歴史をたどると、縄文時代から存在していたとされ、おもに長野県や岐阜県などの山岳地帯で、鳥や小動物の猟犬として活躍してきました。
柴犬の性格は、自立心旺盛で忠実ですが、頑固で警戒心が強い一面も持ち合わせます。平均寿命は約12〜15年と比較的長く、健康管理をしっかり行えば、長く良きパートナーとなってくれます。
紀州犬│勇敢で静かな猟犬気質
項目 | 内容 |
原産地域 | 和歌山県 |
平均体重/体高 | 約18〜27kg/約46〜55cm |
平均寿命 | 約11〜13年 |
平均価格 | 約25〜45万円 |
性格の特徴 | 勇敢で忠実で一途。独立心が強く頑固な面も。 |
外見の特徴 | 筋肉質で立ち耳。無駄のない体型。 |
飼いやすさ | ★★★☆☆(しっかりしつけが必要) |
なりやすい病気 | アトピー性皮膚炎、外耳炎、関節疾患 |
紀州犬は、三重県や和歌山県など紀伊半島原産の中型犬で、おもに猪や鹿の猟犬として活躍してきました。被毛は白色がほとんどですが、胡麻毛や赤毛も存在します。
紀州犬の性格は、勇敢で判断力に優れています。落ち着きがあり、無駄吠えが少ない静かな犬種です。
平均寿命は約13~15年と、中型犬の中では長生きする傾向にあります。猟犬としての気質から警戒心が強いため、幼いころからの社会化トレーニングが重要になります。
四国犬│野性味あふれる俊敏な中型犬
項目 | 内容 |
原産地域 | 四国地方(特に高知県) |
平均体重/体高 | 約15〜25kg/約45〜55cm |
平均寿命 | 約12〜15年 |
平均価格 | 約25〜50万円 |
性格の特徴 | 忠実で勇敢だが神経質な一面もある。 |
外見の特徴 | 引き締まった体型。赤胡麻や黒胡麻などの毛色。 |
飼いやすさ | ★★☆☆☆(上級者向け) |
なりやすい病気 | 皮膚病、関節疾患、白内障 |
四国犬は、高知県の山岳地帯を原産とする中型犬で、オオカミを彷彿とさせる野性的な風貌が特徴です。ピンと立った耳と力強い巻き尾を持ち、獲物を追うための俊敏性と持久力を兼ね備えています。つぶらな三角形の目は鋭い光を放ち、その姿は精悍そのものです。
四国犬の性格は、飼い主に忠実で冷静沈着ですが、猟犬としての本能が強く、警戒心も高いため、しっかりとした訓練が必要です。初心者には飼いにくい犬種といえるかもしれません。
ほかの日本犬種と同じくダブルコートのため、換毛期には多くの抜け毛があります。
甲斐犬│忠誠心に厚く家族に深く懐く
項目 | 内容 |
原産地域 | 山梨県 |
平均体重/体高 | 約14〜20kg/約45〜56cm |
平均寿命 | 約12〜15年 |
平均価格 | 約25〜45万円 |
性格の特徴 | 飼い主に忠実で一途。警戒心が強く番犬向き。 |
外見の特徴 | 黒虎毛の被毛が特徴。精悍で野性的な印象。 |
飼いやすさ | ★★★☆☆(しつけ経験者向け) |
なりやすい病気 | 皮膚疾患、膝蓋骨脱臼、アレルギー |
甲斐犬は山梨県原産の中型犬で、虎のような模様の「甲斐虎毛(かいとらげ)」が最大の特徴です。この毛色は、山中でのカモフラージュに役立ったとされています。
甲斐犬の性質は、「一代一主」といわれるほど、飼い主に対する忠誠心が非常に高いことで知られています。賢い犬種であり、状況判断能力に優れています。
家族に対しては深い愛情を示し、深く懐きますが、警戒心が強いため、ほかの人や犬には慣れにくい面もあります。一度信頼関係を築けば、最高のパートナーとなる賢い犬です。
北海道犬│寒冷地仕様の頼もしい相棒
項目 | 内容 |
原産地域 | 北海道(アイヌ犬として発展) |
平均体重/体高 | 約20〜30kg/約48〜52cm |
平均寿命 | 約13〜15年 |
平均価格 | 約25〜45万円 |
性格の特徴 | 勇敢で活発、寒さに強く忍耐力がある。 |
外見の特徴 | 厚い被毛、足が太く、がっしりした体格。 |
飼いやすさ | ★★★★☆(運動量が確保できる家庭向け) |
なりやすい病気 | アレルギー性皮膚炎、白内障、関節疾患 |
北海道犬は、その名のとおり北海道を原産とする中型犬で、アイヌ民族が古くからヒグマやエゾシカの猟で使役してきた歴史を持ちます。厳しい寒さに耐えるため、密生したダブルコートの被毛と、厚い皮下脂肪を備えています。
北海道犬の性格は勇敢で怖いもの知らずな一方、飼い主には非常に忠実で従順です。持久力と運動能力が非常に高いため、毎日の散歩に加えて、ドッグランなどで思い切り走らせる時間を確保する必要があります。
しっかりとしたしつけと十分な運動を提供できれば、頼もしい家庭犬になります。
秋田犬│堂々とした風格と穏やかな性格
項目 | 内容 |
原産地域 | 秋田県大館市周辺 |
平均体重/体高 | 約32〜50kg/約58〜70cm |
平均寿命 | 約10〜13年 |
平均価格 | 約30〜60万円 |
性格の特徴 | 温厚で落ち着きがあり家族には愛情深い。 |
外見の特徴 | 大型でがっしりした体格。白・赤・虎など毛色が多い。 |
飼いやすさ | ★★☆☆☆(大型犬経験者向け) |
なりやすい病気 | 股関節形成不全、胃拡張、皮膚炎 |
秋田犬は、日本犬の中で唯一の大型犬で、その堂々とした風格と威厳のある立ち姿が特徴です。忠犬ハチ公のエピソードで世界的に有名になり、海外でも高い人気を誇ります。元々は秋田県でマタギ犬として熊猟などに用いられていました。
秋田犬の性格は、穏やかで落ち着いており、家族に対しては人懐っこい一面を見せます。しかし、飼い主や家族を守ろうとする意識が強く、警戒心も持ち合わせています。
大型犬であるため、十分な運動量と、その力をコントロールできる飼育環境が不可欠なので、初心者にとって飼いやすい犬ではないでしょう。しかし、唯一無二の深い絆を築ける日本犬の魅力あふれる犬種です。
日本犬の歴史と保存活動の始まり
日本犬のルーツは古く、縄文時代の遺跡から犬の骨が出土していることから、その祖先は古代より日本列島で人々と共に暮らしていたと考えられています。ここでは、日本犬のルーツや、日本犬種の絶滅危機と保存活動について紹介します。
縄文犬にルーツを持つ古代の日本犬
日本犬の祖先とは、縄文時代に大陸から人々と共に渡ってきた犬だと考えられています。全国の縄文遺跡からは、埋葬された犬の骨が多数発見されており、当時の人々が犬を単なる動物としてではなく、家族やパートナーとして大切に扱っていたことがうかがえます。
これらの縄文犬は、猪や鹿などの狩猟において、獲物を追い詰めたり、仕留めたりする重要な役割を担っていました。彼らの骨格の特徴は、現代の日本犬、特に柴犬などの中・小型犬種によく似ており、日本犬の原型がこの時代に既に形成されていたことを示唆しています。
戦後の絶滅危機と保存会の発足
明治時代になると、海外からマスチフやポインターといった洋犬が数多く輸入され、国内の犬との交雑が急速に進みました。さらに、第二次世界大戦中は食糧難や、軍用の毛皮供出(けがわきょうしゅつ)により、多くの犬が犠牲となり、日本犬は絶滅の寸前にまで追い込まれます。
このような状況に危機感を抱いた斎藤弘吉氏らが中心となり、1928年に「日本犬保存会」が発足しました。彼らは日本全国を調査して純血の日本犬を探し出し、それぞれの犬種の特徴を定めた「日本犬標準」を作成したのです。
この活動が実を結び、6つの犬種が天然記念物として指定され、組織的な保存への道が開かれました。
現代の日本犬保存活動
現代においても、日本犬保存会をはじめとする各犬種の保存団体が、その純血性を守るための活動を続けています。
主な活動としては、血統書の発行や管理、そして犬種のスタンダード(標準)を審査する展覧会(ドッグショー)の開催が挙げられます。展覧会は、犬質の向上と保存を目的としており、ブリーダーたちはよりスタンダードに近い犬を作出するために努力を重ねています。
また、遺伝的疾患を減らすための取り組みや、オオカミの血を引くといわれる日本犬本来の野性味や気質を後世に伝えていくことも、重要な活動の一つです。こうした地道な努力により、日本犬の貴重な血統が守られています。
日本犬の飼い方としつけのポイント
日本犬は、自立心が強く、時に頑固な一面をみせることがあります。そのため、彼らを家族として迎えるには、その性質を深く理解した上での接し方が求められます。ここでは、日本犬の飼育に適した環境や、しつけの具体的な注意点について解説。実際に日本犬を飼っていた飼い主の実体験もご紹介します。
飼育に向いている人・環境とは?
日本犬の飼育には、犬の習性を理解し、毅然とした態度でリーダーシップをとれる人が向いています。彼らは飼い主をよく観察しており、一貫性のない指示には従わないことがあります。
また、元々猟犬として広大な山野を駆け回っていたため、運動欲求が非常に高い犬種です。
毎日の散歩はもちろんのこと、定期的に思い切り走れるような安全な場所を確保できる環境が理想的です。
特に中型犬以上は、アパートなどの集合住宅よりも、庭のある戸建て住宅での飼育が望ましいでしょう。江戸時代から続く犬との関係性のように、深い絆を築く時間を十分に取れることも重要な要素です。
日本犬のしつけ方・注意点
日本犬のしつけで重要なのは、以下の3点です。
- 主従関係を意識したしつけ
- 子犬期の社会化トレーニング
- 叱るよりも信頼を重視する訓練
警戒心が強い性質を持つため、子犬期にさまざまな人や犬、物音などに慣れさせておくことで、将来的な問題行動を予防できます。
しつけにおいては、褒めて伸ばすことを基本としながらも、いけないことは「ダメ」と短くはっきりと伝える一貫性が求められます。
彼らの自立心の強さから、力で押さえつけようとする方法は逆効果になりがちです。飼い主が頼れるリーダーであることを示し、信頼関係を築くことで、日本犬は本来の従順さを発揮します。主従関係を明確にすることが、共に暮らす上での基本となります。
飼い主の実体験
北海道犬を飼っていましたが、子犬時代はほんとうに元気でわんぱくで、しつけもお散歩も大変でした。力が強くパワフルなため、引っ張り癖を直すのも一苦労で、根気強く毎回言い聞かせていました。
お手入れ・健康管理
日本犬は、春と秋の換毛期に大量の毛が抜けるダブルコートの被毛を持っています。この時期には、毎日のブラッシングで死毛を丁寧に取り除き、皮膚の通気性を保つことが皮膚病の予防につながります。シャンプーは月に1〜2回程度を目安にすると良いでしょう。
また、日本犬は比較的丈夫な犬種ですが、アレルギー性皮膚炎や関節疾患など、犬種ごとにかかりやすい病気も存在します。日ごろから食欲や便の状態、歩き方などをよく観察し、異常があれば早めに動物病院を受診することが大切です。
飼い主の実体験
北海道犬は、とにかく春を過ぎたころの抜け毛量がすごくて、ブラッシングが大変でした。そのままにしておくとかゆくなってしまうので、大きな硬めのブラシでしっかりお手入れをしていました。
日本犬の入手方法と価格の目安
日本犬を家族に迎えたいと考えた場合、いくつかの方法があります。
代表的なのは、その犬種を専門に繁殖しているブリーダーから直接譲り受ける方法です。特に甲斐犬のように特定の地域(山梨県など)に根ざした犬種は、現地のブリーダーとの繋がりが重要になることもあります。
また、各犬種の保存会や、保護犬の譲渡を行っている団体を通じて迎える選択肢もあります。それぞれの方法にメリットと注意点があるため、自身のライフスタイルや犬との関わり方を考え、最適な方法を選ぶことが大切です。
ブリーダーから迎える場合
専門のブリーダーから子犬を迎える最大のメリットは、親犬や兄弟犬の様子、飼育環境を直接確認できる点です。親犬の性格や健康状態を知ることは、子犬の将来の姿を予測する上で重要な情報となります。
また、その犬種に関する深い知識を持つブリーダーから、飼育上のアドバイスを継続的に受けられることも心強いでしょう。
価格は犬種や血統によって大きく異なり、柴犬で15万円〜40万円、その他の犬種では20万円以上が目安です。希少な犬種や展覧会で優秀な成績を収めた血統の場合は、さらに高額になることもあります。
絶滅の危機を乗り越えた犬種を守るという、意識の高いブリーダーも多くいます。そうした保存活動や犬種への尊敬を持って、愛犬を迎えることも重要です。
飼い主の実体験
私は北海道犬を飼いたいと考え始めたころに、犬種の展覧会に行きました。そこで北海道犬のお話を聞くうちに縁ができ、ブリーダーさんをご紹介いただきました。
保存会・譲渡団体を通じて迎える場合
各犬種の保存会では、会員であるブリーダーを紹介してもらえる場合があります。展覧会などに足を運び、団体の関係者と直接話すことで、信頼できるブリーダーと出会う機会が得られるかもしれません。
また、数は多くありませんが、飼育放棄された日本犬を保護し、新しい飼い主を探す譲渡団体も存在します。保護犬を迎える場合、成犬であることが多く、性格や健康状態がある程度わかっているというメリットがあります。
譲渡には審査やトライアル期間が設けられていることが一般的で、その犬が終生幸せに暮らせるかを慎重に判断されます。新しい名前を付け、第二の犬生をサポートするという選択肢です。
日本犬に関するよくある質問(FAQ)
日本犬に興味を持ち、飼育を検討し始めると、さまざまな疑問が浮かんでくるものです。ここでは、日本犬を迎える前によく寄せられる質問をいくつかピックアップし、それぞれについて分かりやすく回答します。
日本犬と和犬の違いは?
日本犬と和犬は、ほとんど同じ意味で使われる言葉ですが、厳密には少しニュアンスが異なります。日本犬は、一般的に公益社団法人日本犬保存会が公認し、国の天然記念物に指定されている6犬種(秋田犬、甲斐犬、紀州犬、柴犬、四国犬、北海道犬)を指す場合に用いられることが多いです。
一方で和犬は、より広義的に日本原産の犬全般を指す言葉として使われます。そのため、天然記念物指定の6犬種以外にも、琉球犬や川上犬なども含めて和犬と呼ぶことができます。日常的な会話では、両者を区別せずに使うことがほとんどです。
日本犬は初心者でも飼いやすい?
日本犬は飼い主に忠実で賢い反面、自立心が強く頑固な一面も持つため、犬の飼育が初めての人にとっては、しつけが難しいと感じる場合があります。
特に、猟犬としての気質が色濃く残っている四国犬や、がっしりした大型犬である秋田犬は、より多くの運動量と専門的な知識を必要とします。
どの犬種を選ぶにしても、迎える前にその犬種の特性を十分に学び、子犬期から社会化トレーニングを徹底し、信頼関係を築く覚悟が必要です。
初心者のおすすめの飼いやすい日本犬は?
もし初心者が日本犬を飼うのであれば、比較的サイズが小さく、国内での飼育頭数が多く情報を得やすい柴犬から検討するのが良いでしょう。性格は、頑固で独立心が強い面もありますが、比較的穏やかで環境適応力が高いので、初めて日本犬を迎える方には向いています。
四国犬と土佐犬の違いは?
四国犬と土佐犬は、どちらも高知県(旧土佐藩)にルーツを持つ犬ですが、全く異なる犬種です。四国犬は、国の天然記念物に指定されている純粋な日本犬で、古くから猪猟などで活躍してきた中型犬です。
一方、土佐犬(正式名称:土佐闘犬)は、闘犬としてより強くするために、在来犬である四国犬を基礎に、ブルドッグやマスチフなどの大型洋犬を交配して作出された犬種です。
そのため、外見も性質も大きく異なり、四国犬が野性的ながらも引き締まった体躯であるのに対し、土佐犬は筋骨隆々とした大型犬です。闘争本能が非常に強いため、飼育には特別な知識と管理が求められます。
日本犬をめぐる今と未来
古くから日本の文化と深く結びついてきた日本犬ですが、現代社会においていくつかの課題に直面しています。日本犬という文化を未来へどのように継承していくか、その良さをどう伝えていくかが、これからの大きなテーマとなっています。
飼育頭数の減少と課題
現在、日本犬の中で柴犬は安定した人気を保っていますが、それ以外の5犬種の登録頭数は年々減少傾向にあります。特に中型犬や大型犬は、都市部での飼育が難しいことや、猟犬としての気質をコントロールするための専門的な知識が必要なことから、飼い主が限られてしまうのが現状です。
また、熱心に繁殖を続けてきたブリーダーの高齢化と後継者不足も深刻な問題となっています。このままでは、遺伝子の多様性が失われ、犬種の維持自体が困難になる可能性も指摘されており、その良さを守り伝えていくための新たな取り組みが求められています。
若い世代に伝えたい日本犬文化
日本犬の未来を考えるうえで、若い世代への魅力の発信と文化の継承が不可欠だといわれています。SNSなどを通じて柴犬の愛らしい姿が拡散され、世界的な人気を得ているように、情報発信の方法は多様化しています。
しかし、その可愛らしさだけでなく、日本犬が持つ歴史的背景や、飼育の難しさ、そして生涯にわたる責任についても正しく伝える必要があります。
日本犬は、ただのペットではなく、日本の自然や歴史と共に生きてきた文化的な存在です。
その価値を若い世代が理解し、興味を持つことが、この貴重な文化を守り、未来へつないでいくための第一歩となります。
世界中から愛される日本犬の人気の秘密とは?
近年、日本犬は国内だけでなく、世界中で高い人気を博しています。その火付け役となったのが柴犬で、「ShibaInu」はインターネットミームをきっかけに国際的な知名度を得ました。
また、忠犬ハチ公の物語で知られる秋田犬は、飼い主への忠実さと愛情深さの象徴として、多くの海外の愛犬家の心を捉えています。
彼らが世界で愛される理由は、その愛らしい見た目だけではありません。飼い主だけに心を開く忠実な性格、凛とした立ち姿が醸し出す気高さ、そして過度な改良されていない素朴で野性的な美しさが、文化や言語の壁を越えて多くの人々を魅了しているのです。
まとめ│日本犬は素朴で勇敢な頼れるパートナー!
日本犬は、国の天然記念物にも指定されている日本の貴重な在来犬種です。彼らを家族として迎えるには、その猟犬としてのルーツや自立心の強い性質を理解し、一貫性のあるしつけと十分な運動、そして何よりも深い愛情と信頼関係を築くことが求められます。
日本犬の特性をよく学び、責任を持って向き合うことができれば、彼らは何ものにも代えがたい、頼れる人生のパートナーとなってくれるでしょう。

愛玩動物飼養管理士、いぬ検定、少額短期保険募集人の資格を保有。
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